第150回『夢の樹』→落選

 大国主神が各地の地主神を呼んで、日頃の労いをすることになった。

「皆の者、日々の平穏への尽力、ご苦労である。褒美として願い事を一人一つ叶えて使わす」

 ざわつく地主神たち。ここぞとばかり願い事を考え始めた。

「ただし、条件がある」

 場は一瞬で静寂に包まれる。

「三人の願いが一致した場合のみ、叶えることとしたい」

 流石の大国主神といえども、一人一人の願いを聞いてはいられない。

 すると老人、若者、女性の三人組が手を挙げた。

「わしら、名前の漢字の『木』を『樹』に変えて欲しいんじゃ」

「それはなぜだ?」

「だって『木』より『樹』の方がお洒落じゃん」

「例えば『夏木』よりも『夏樹』の方が味があるわ」

「『樹』に変えてもらうのが、昔からの夢だったんじゃ」

 大国主神は少し考えた後、首を大きく縦に振った。

「わかった。ではお前たちの名前を言ってみよ」

「俺、六本木」

「私は乃木坂よ」

「わしは木更津じゃ」

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