第145回『永遠の舞』→落選

「ねえ、秒速七・九キロメートルって知ってる?」

「さあ? なんだかすごく速そうだけど……」

「第一宇宙速度。貴方が今作ってるその金属製の折鶴は、この速度を超えないと人工衛星にはならないのよ」

「へえ、この間買ってきたドローンで大丈夫だと思ってたけど。じゃあ、気球に括り付けて飛ばしてみるか」

「そして秒速十一・二キロメートル。この速度を越えないと、他の惑星には行けないの」

「なんだ、気球じゃダメなのか。宇宙に折鶴を飛ばすのって難しいんだな」

「さらに秒速十六・七キロメートル。この速度を超えないと、太陽の周りを回るだけになっちゃうの」

「ふうん、太陽の周りをね……。ところで太陽って永遠だと思う?」

「少なくとも私達の愛よりかは永いと思うけど」

「じゃあ、それで十分だ。折鶴は気球で飛ばすよ」

「それだったら私が作ったセルロースナノファイバー製の折鶴にしない? 中が真空になってて、それだけで飛んで行くけど」

「へえ、本当だ。これってどれくらい宙に舞っていられるのかな?」

「そうね、私達の愛くらいは大丈夫かな」

「じゃあ、一緒に飛ばそうよ」

「うん、これからもよろしくね」

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