第129回『おはよう』→落選

「おはよう、ずはいん!」

「おはよう、ずはいん!」

 朝の道場に元気な声が響く。締め括りの掛け声だ。しばらくすると、稽古を終えた若者達が道場から出て来た。

「今日の稽古も難しかったな」

「えっ、全然難しくなかったじゃない。ポン吉、あんたって運動音痴?」

「うるさいなあ、ポン子が天才なんだよ」

「あんな簡単な変身術の応用ができなくて、どうすんのよ」

「大丈夫。男子生徒に化けるのだけはできるから」

「男子生徒だけって、あんた、今朝習ったことを実践しないつもり?」

「ああ、おいらは勘弁だね」

 なんて不真面目な。ポン子はポン吉を睨みつけた。

「ところでポン子、化ける時に逆立ちするのって何故なんだ?」

「えっ」

 ポン子は絶句した。

「あんた、朝の掛け声を何だと思ってたの? 『尾は陽、頭は陰』って先生の教えの基本じゃない」

「あれってそんな意味だったのか」

「あ、あんたねえ」

「やべぇ、遅刻しちまう」

 ポン子の嘆きを遮るように、ポン吉は逆立ちして男子生徒に変身する。

「ちょ、ちょっと待ってよぉ……」

 ボン子も慌てて逆立ちし、食パンを咥えた女子生徒に変身した。

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