人を傷つける100の方法
病んでいる人が多いなぁ、と思う。でもこの「病む」という言葉──というか字面は、なんとなくあたし的に違和感があって、「病む」という文字より「暗む」の方が適当かなぁ、と思う。もちろんこんな言葉は日本語にないだろうから、あたしが勝手に作り出した当て字の造語なんだけれども。
そして、なんでそんなことを思うかと言えば、人の心は「病にかかっている」のではなく、「闇に覆われている」という感じがするから。
闇の中にすべてを閉じ込めて、どこかから借りて来た鉄面皮で自らを武装し、傷つくことも傷つけることも避ける。鋼鉄で覆われた心は、いくらぶつかり合ったって派手な音を立てるだけで傷つかない。
人の心は弱く、脆いものなんだろうね。自分を顧みればそれはとてもわかりやすい。あたしは傷つくのを怖れ、他者を恐がり、それゆえ他者との間に高く厚い強固な壁を作り、誰をも寄せつけまいとしている。
何をそんなに恐がっているのかと問われれば、それは「自分の存在を否定される」こと。わかりやすく言えば、自分が綴る言葉に対して「それは違う」と言われること。
自分に対して共感以外のものを向けられると、あたしはただちにそれを「自分への否定」と受け取り、すぐにそれは「お前はこの世界に存在するな」という他者からの要望なのだと思い込む──そんな、酷く短絡的な反応を起こす。
なぜそんな極端な反応をしてしまうのかという理由については、『私はここにいます』に書いてあるのでここでは省くけれど、理由がわかっていたって、そして「ならどうすればいいか」がわかっていたって、なかなか、それは改善されない。
恐い恐い恐い──あたしを否定しないで、あたしをいらないと言わないで、この世に存在するな、死ね、と言わないで。
言葉に変換するとしたら、こんな感情があたしの内に沸く。それは自分で作り上げた思い込み、妄想なのだと頭でわかっていても、心は怯え恐怖し、自らが作った「否定の刃」で己を切り刻む。
あたしほど極端ではないにしても、ネットをうろうろしていると、他者からの批判や評価をそういうふうに受け取る人はきっと少なくないんじゃないか、と思う。
否定という刃、それによって刻まれる傷。傷つくのが恐くて、傷つけるのが恐くて、曖昧でどうとでも取れる言葉が電子の海を行き交う。けれども、それでも相手が傷つき、傷ついた相手は「自分を否定するな」と死を求められることに対する反撃に出て、そんなつもりはなかったのに、互いを酷く傷つけ合うこともある。
すると余計、腹を割った正直なことなんて言えなくなって、もし言えたとしても、冗談に紛れさせて笑い話にし、簡単に流してしまえるものとし、「深い意味はないんだよ、傷つけるつもりはないんだよ」というポーズを相手にアピールすることになる。
傷つかないように、傷つけないように──すべての言葉は自分の内側をぐるぐると回り、他者へ向かうことがない。他者へ向かわない言葉は人とのコミュニケーションも生まず、人は自分の内側に隠り、闇に覆われて人の暖かさを求める。自分の存在を認めてもらうことを望む。
でもそんなんじゃ、いつまで経っても光の下へは出られない。
傷つければいいのに。傷つけるのは悪いことじゃないのに。人を恐がり、傷つくことを怖れるあたしが言うのも変だけど、傷つくのは大切なことじゃないのかな。
傷は決して癒えたりしない。いつまでも残る。ただ痛みを訴えなくなるだけ。痛みを抱きとめ、愛おしむことができるようになるだけ。そして自分を振り返って見てみると、そうすることによって、傷つけた相手をも愛おしむことができるようになるのだと思う。
あたしは恐がるあまり、ネットを始めてたくさんの人を傷つけただろうし、傷つけられた。そして、そのことを後悔してないと言ったら嘘になるけど、でもサイト開設当初と比べて、今はずいぶん人を恐がらないようになれたと思う。そしてそれは、そうして傷つけ合って来たからこそ、だと思ってる。
傷をつけても悲しむことばかりじゃない。痛むばかりじゃないよ。自らが望めば、視線を多方向に向けて探してみれば、逃れるのではなく受け止めようとすれば、それは希望や暖かさや光を呼ぶこともある。
だから、自戒を込めてあたしは思う。自分の内側にある暗闇の中で安息を得るだけじゃなく、もっと人を、何より自分を傷つけてみようと。恐れることなく、自ら刃へこの身を投げ出そうと。
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