第10話 切っ掛けを拾う 4

 宿屋に戻り、早めの朝食を摂って。ヨシとワクァは一旦ベッドに潜り込んだ。夜通し戦っていた疲れから、二人はあっという間に眠りの世界へと誘われる。

 そして、二人が目を覚ました頃には陽が既に高く上っており、街の閉鎖は解除されていた。

「これなら、出発できるわね」

「そうだな」

 そう言葉を交わし、二人が出立の準備をしているところに、今までどこにいたのか……ウトゥアがやって来た。手には蜜蝋でしっかりと封がなされた書簡が握られている。

「あ、ヨシちゃんにワクァちゃん、おはよう。よく眠れた?」

「お陰様で。ウトゥアさん達は?」

 ヨシの問いに、ウトゥアはあははと苦笑した。

「実は、夕べから寝てないんだよねぇ。普段から夜更かしをするクセがあるものだから、二徹三徹ぐらいはいつもの事なんだ。それよりもさ、二人にお願いがあるんだけど……良いかな?」

「?」

 首をかしげる二人に、ウトゥアは手にしていた書簡を手渡した。見れば見るほど立派な書簡だ。紙も、相当良い物を使っている。

「おつかいを頼まれて欲しいんだ。ヘルブ街の城にいる、陛下まで」

「へっ!?」

「いっ!?」

 言葉を失って固まった二人に、ウトゥアは少しだけ申し訳無さそうな顔をして言う。

「そう。さっき手に入れた書類とか、ここでの顛末を記した報告書とか……陛下に送っておきたいんだけど、私はまだ急いで行かなきゃいけない場所があってね。ヨシちゃん達なら盗賊に盗られたりとかも無さそうだし」

「私達が……王様に……?」

「しかし……俺達で大丈夫なんですか? こんな得体の知れない人間が二人で行ったところで、通してくれるとは……」

 ワクァが渋る顔をすると、ウトゥアは懐から銀貨を取り出した。貨幣として流通している物ではない。表面に何やら小難しげな紋様が彫り込まれている。

「これを持っていくと良いよ。これがあれば、私からの使者だって大体の兵士はわかってくれる。それでも心配なら、駄目押しでこう言うと良いよ。旅の途中で拾った、国の行く末を安泰にする宝をお持ちしました、ってね」

「!?」

 二人は目を丸くして、書簡を見た。確かに、ヨシは元々、その宝を拾うために旅をしていた。それが、この書簡だと……?

「ヨシちゃんが拾ったような物だからね。嘘じゃない。それに、ヨシちゃんがキレてたあの男、ヘルブ街で会った事があるんでしょ? なら、ヘルブ街まで行けば何かヒントがあるかもしれないよ?」

「……」

 二人は、顔を見合わせた。この書類をヨシが拾ったような物だ、と言うのがイマイチわからない。……が、あの怪しい男を追い込み、書類を回収する暇を与えなかったのは確かにヨシの功績によるところが多いとも言える。やがてヨシは、あまり気乗りのしない声で言う。

「……ま、一旦拠点に戻る良い切っ掛けか……」

 そう言って、ヨシはおつかいを了承した。ワクァの方でも、男のヒントがあるかもしれないのであれば異論があろうはずが無い。

 二人と一匹は身支度を整え、旅の準備を終えると、リィに声だけかけて出発した。全てが始まったその街へ。

 珍しくあてのある旅だな……。そう、街を出ながらワクァは呟いた。

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