第24話

アリスは無理矢理ベッドから起き上がる。


「……くぅ。」


体を強かに打っていたのだろう。

鈍い痛みが彼女を襲う。


「だ、駄目よ!アリス!」


無茶させまいとしがみつく、メアリーアン。


「……駄目なの、時間がないのよ。治ってからじゃ間に合わない。」


メアリーアンを振りほどき、何とかベッドから降りて、壁伝いに移動する。


「どこにいくの?!時間って何の時間?!」


アリスは病室から出た。

宛があるわけではない。探すしかない。

多分……、同じ病院にいる。そう感じた。


「アリス……。」


メアリーアンも後ろから着いてきていた。

察してくれたのか、何も言わない。


「あれ~?アリスちゃん?起きたの?でも、安静に……。」


眠たそうな看護師の青年が声を掛けるが、移動に必死なアリスは気がつかない。

メアリーアンが頭を下げ、通りすぎる。

アリスは導かれるように、奥へ進んでいく。

よろめきそうになるたびに、メアリーアンが支える。

多分、まだ体への負担は大きい。それでも、急がねばならない。


(間に合って………!)


逸る気持ちとは裏腹に、進みは遅い。

歯を食い縛り、一歩一歩前進していく。


………どれくらい歩いただろう。

普通に歩けたなら、なんてことない距離。

体の重みと痛みが相まって、異常に距離があるように思える。


(許さない!許さないから!)


を目指して、ひたすら歩いた。

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