第4話 三年後・・・・・・ 夏

 軍の施設で博士は気の進まない仕事を三年間続けた。寝る時間と食事だけは前の生活より充実した。だけど、軍の施設で博士がいくら頑張って仕事をこなしても次の仕事もやはり戦争の為のものだった。

 博士が愛した研究を行う機会は決して与えられなかった。


 皮肉なことに博士が開発したシステムはこの国の軍事活動に大きく貢献した。すなわち、より多くの人が短時間に殺されたのだ。

 

 ある一つの防衛システムが完成した夜、博士は自殺した。


 博士の人生の最後の最後まで僕は一緒だった。博士が死んだ時、僕は悲しむよりも博士がこの生き地獄からやっと解放されたことを喜んだ。博士の計算では最後の研究結果をもって負債は全て返済されることになる。最後まで律儀な人だった。


 博士の死は老衰と発表された。博士の研究成果はこの国の軍事的勝利に大きく貢献した。博士は偉人として国葬となった。その見た目だけは大掛かりな葬儀には数千人の人が訪れた。しかし、博士と関わりを持った、そして博士が愛した人々は誰も訪れなかった。


 博士の遺言で、博士の遺体は博士の故郷にある小さな火葬場で火葬されることになった。火葬は内々にひっそりと行われた。そして、その日、僕の寿命もつきた。

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