第83話

「いや……、そうだな、まずは礼を言おう」

 口では感謝を述べていてもレグスの顔には警戒の色が浮かんだままである。

「まったく、可愛げのない子だこと。リーシェとは大違いね」

 少女の口からリーシェという名がでてきた事にレグスは驚いた。その名を聞いて思い浮かぶ人物はただ一人。

「何故、その名を」

「あら、驚くような事? あなたは一体私の事を何だと思ってるわけ?」

「指輪から聞こえた声、その正体だという事ぐらいは察しがつく」

 そこでレグスの言葉は止まる。

「なによ、それだけ?」

「精霊……」

 弱々しい口調。レグスは自分の出した答えに確信が持てずにいた。

「精霊ねぇ、間違いではないけどえらく漠然とした答えだわ。彼女に何も聞かされてなかったようね」

「その彼女とお前はどういう関係なんだ」

「答えてあげてもいいけど、私、質問されるのって嫌いなのよね。短命な人間の質問にいちいち答えていたら限がないでしょ。少しは自分の頭で考えてみたらどう。少しは利口な子かと思ってたんだけど、見当違いだったのかしら」

 馬鹿にするように少女が笑うがそこに悪意は感じられない。侮蔑というよりは無邪気、そんな言葉が似合う笑い。

 不思議な表情をする少女だ。幼さとは無縁の空気を帯びながら浮かべる笑みは人間と同じ、いやそれ以上に幼さを感じさせた。

 そんな彼女の笑顔を見ながらレグスはこれまでの出来事を思い返し、一つの答えを導く。

「……フェスタ・アウラ、古代人が残した遺跡。あの遺跡から感じた霊力とお前から感じられる力は似ている、ほとんど同じと言ってもいいほどに」

「それで?」

「あれはかつて古代人が古き精霊に敬畏を示し建てた物だ」

「そうね」

 適当に相槌を打ちながら少女はレグスの周囲を歩く。

「つまりお前はあれに関する何らかの存在、……あるいは古き精霊自身」

 推理を聞き終えると彼女は歩を止め言った。

「まぁ正解にしといてあげるわ」

 そしてあらためてレグスの方を見て言葉を続ける。

「我らはスティア。かつて最初の友と呼ばれ、時に古き友とも呼ばれた者。お前達が崇めるユピアの神々の来界より遥か昔、このエンテラの地に存在した元始の子」

 それまでの口調とはうってかわって荘厳な話し方にレグスは多少気押されながらも、少女の口から発せられる美しい声色に自然と惹き込まれていってしまう。

 まるで魔法がかかったように、強い引力を持つ少女の言葉。

「覚えておくがいいリーシェの子、レグスよ。我が友名はセセリナ。盟約に基づきお前達を守護する者なり」

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