第72話『エルド・ダナテーラの神殿』

 オークとの最初の遭遇から幾日かが過ぎた。

 その間に何度かオーク達と戦闘になったが、レグスの活躍によりボルマンの出番すらなく、三人は無事、オークの縄張り地帯を抜ける。

 そしてさらにその先、村を出て丁度二週間、目的の地で彼らは古代人が造った神殿を発見する。

「おお、まさしくこれはカドマ・ドラスに記されたエルド・ダナテーラの神殿」

 魔術師ボルマンは苔に塗れた古びた神殿を目にし、感嘆の声をあげる。

「やはり、やはり、ここに存在していたのだ。わしの研究は正しかった」

 驚喜する魔術師にファバが言う。

「神殿? 俺達はフェスタ・アウラとかいう祭り用の遺跡を探しにきたんじゃなかったのかよ。全然違うもんだろ、これ」

 少年の前に建っているのは、ボウル村にあった遺跡とは似ても似付かぬ建造物。

「何を言うか、小僧。フェスタ・アウラはこの神殿の中だ、ダナテーラ人は神殿内に精霊を迎えるフェスタ・アウラを造ったのだ」

「神殿って神様を祀る為のものだろ、古代人にとっては精霊が神様だったて事か?」

「まったく、何も知らん奴だの。いいかダナテーラ人はだな、もともとドーラスという神を信仰していたのだ。そこへある時……」

 魔術師の話が長くなりそうだと察したのだろう、ファバが老人の話を止める。

「あぁ、ストップ、ストップ。わかった、俺がわるかったよ、とにかく中に入ろうぜ、爺さん。レグスもそう思うだろ」

 助けを求めるようにレグスに話を振るファバ。

「ああ、無駄話は後で好きなだけすればいい」

「なんだ、無駄話とは失礼な。人が丁寧に説明してやろうというのに」

 不機嫌になるボルマン。そんな彼にレグスが言う。

「はやいところ、フェスタ・アウラの現状を調べる必要があるだろう。どうやら手放しで喜べそうにもないようだしな」

 レグスの顔は目的地に到着したというのに冴えないものだった。

 それもそのはず、神殿から、村のフェスタ・アウラから感じたような霊力を感じる事が出来ないのだ。

 その事に、ボルマンもようやく気付いたらしく。

「そんな、そんな馬鹿な」

 顔色を変え、うろたえていた。

「どういう事だ?」

 ファバだけはまだ気付いていないらしい。

「霊力が感じられない」

 レグスにそこまで言われてファバもようやく事態を理解する。

「おいおい、まさかここまで来て空振りかよ」

 ファバの落胆も大きかったが、ボルマンのそれは少年の比ではない。

「なんて事だ、なんという……」

 膝をつき、気力を無くした顔。見ていて痛ましくなるほどの様だった。

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