第65話

 ボルマンの頼み事、それは村の危機から村民を救う為の手助けをして欲しいとの事だった。

 なんでも彼は昔からフェスタ・アウラについての研究をしており、ボウル村にもその為に滞在しているのだという。そして彼が所有する古い文献にはこの村にあるのとは別に存在するフェスタ・アウラについても記載されおり、これを上手く利用して村民達を救おうというのだ。

 それにはまず、文献に記載されたフェスタ・アウラが実在しているのかを確認しなくてはならない。だがその道のりは決して安全なものではないという。

「さきほどまで刃を向けようとしていた相手に、ずいぶんと都合のいい話だ」

「わかっておる。だが、見ての通りこの村は特殊だ。近場の街では、純血の青目人はともかく、東黄人や混血の者となると容易に受け入れてはくれまい。とくに混血者は東黄人からすらも憎悪の対象となりやすい。村民揃って移り住むというわけにはいかんのだ」

「それが私達に何の関係がある」

 レグスの口調は冷たい。

「礼というわけではないが、協力してもらえるのなら、領主が持ち去った石について、わしが知る限りの事を話そう」

 遠目から村人達が不安そうにレグス達を見つめいてる。彼らの運命はレグスの決断にかかっているとも言えるだろう。

「話にならないな。現物が手に入るならともかく、情報だけでは。それも石についてどれだけ知っているか、怪しいものだ」

「少なくともあの石については、お主よりも知っておるつもりだ」

「では今ここでそれを喋らせるのも悪くない」

「わしは何も話さんよ。お前さんらが頼みを聞いてくれるまではな」

「魔術師よ、お前が守ろうとするこの村の人間を一人、一人、順番に狩っていくなど、私には造作無い事。耳にしているはずだ、貪欲な蛇の仔の噂は」

「出来んよ、お前さんにはそんな事。たとえ蛇の仔であったとしてもだ。……目がそう言っておる」

 レグスから目を逸らさずボルマンは断言した。

 その時であった、レグスが身につけていた指輪に異変が起きる。

「レグス、指輪が!!」

「その指輪……」

 青白く光りだすレグスの指輪にファバとボルマンは驚く、そしてそれはレグスも同じ。

 指輪は光るだけでなく、不思議な力を発していた。その力は目の前の遺跡、フェスタ・アウラから感じる力に似ていた。

 霊力、人が操る魔術とは違う、精霊が宿していたという特別な力。

 その力をレグスは指輪から感じていた。長年指輪を身につけていた彼にとっても珍しい出来事だった。

 以前、指輪からこのような力を感じたのは……。

「何故フェスタ・アウラと同じ力を……」

 ボルマンが指輪の謎をレグスに聞こうとするが。

「さぁな」

 その謎の答えを知りたいのは彼も同じ。

 指輪がフェスタ・アウラに反応しているのは間違いない。

「だが、気が変わった。いいだろう老魔術師よ。お前の頼み、聞いてやろう」

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