第28話

「ぶっ殺す!! ぶっ殺す!! ぶっ殺っすうううう!!」

 闇雲に戦うだけの大男。だがそれが恐ろしく強い。

 なにしろ体格が桁違い。大斧のリーチが桁違い。

 隙は大きいが急所は遠く、頑丈な肉体を多少斬り付けたところで戦況に変化はない。

――さすがにこの状態では無理か。仕方がない。

 男は手にした黒の剣をその場に置き、短剣へと持ち替える。

「てめぇ、ふざけてんのか!!」

 剣ですらまともなダメージを与えられていないのに、短剣など持ち出すなんて、ダーナンにはその行動の狙いが理解できなかった。

――馬鹿で助かるな。

 咆える大男を無視し、短剣で斬りかかる男。

 大振りの攻撃を避け、ダーナンの巨体を切り裂く。しかし、傷は浅い。

「無駄だ!! そんな得物でどうにかできると思ってんのか!!」

――できると思ってるさ。

 無言で同じ事を繰り返す。剣を置きより身軽になったせいもあるか、男の動きは速度を増し、ダーナンを攻撃し続けた。

 浅い傷が増えていく、だがその傷だけではダーナンはとうてい倒せぬように思えた。

「ちまちまと鬱陶しい蝿猿があああああああ!!」

 大斧が振り下ろされる。怒りを込めた一撃。それが何度も繰り返されたせいか、男とダーナンが戦うこの辺りの地面はひどい事になっていた。

「いい加減にしろよ」

 そう言いながらいつものように大斧を軽く持ち上げようとしたダーナン。

「ぬっ!!」

 だが、彼はバランス崩し地に膝をついてしまう。

「なんだ……」

 戸惑う大男に敵である東黄人は言う。

「それはこっちの台詞だ。驚いたぞ、いくらその巨体とはいえ、このアプラサイの猛毒が回るのにどれだけ時間をかけるつもりだ」

 短剣を見せ付けながら男は言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る