波乱万丈な体育祭~共闘同盟~(パン食い競走)
『パン食い競走に参加される生徒は、入場門前にお集まりください。繰り返します。パン食い競走に参加される生徒は、入場門前にお集まりください』
「───ついに来たか」
パンの香ばしい香りが漂ってくる。
隆一が待ってましたとばかりに意気込む。
『なお、今年のパン食い競走は事前にお知らせしたように、1年生は一クラス三人、2年生は一クラス二人。3年生は通年通り参加種目ではありません。今年から時間の削減のため、合同となります。1年生と2年生で協力し合っても構いません』
「あからさまだな、おい……」
だが、これだけではなかった。
『パン食い競走で高得点が出てしまった場合、そこで体育祭は終了となります。この競技はポイントの上限解放がなされています。全力で対応よろしくお願いします』
待て、なんだよそれ───。
「……去年、あまりにも普通過ぎてダラけたらしい。散財したセンコーは、泣く泣く残ったパンを持ち帰り……食べ切るまでしばらく菓子パン生活を強いられたらしい」
「やりたいくらい好きなんだから、本望なんじゃね? 」
「食べることに関してはな。盛り上がらなかったから、味気なかったんだろ。ちょっと塩っけ増えたパンになったらしいぜ」
「悔し涙……かな」
譲が苦笑いをする。
「だから! 今回更に品数を増やし、ヴァリエーションで勝負にでた。しかし、それだけでは去年の二の舞だ! 」
「おまえはそのセンコーの回し者かよ……」
無駄に熱弁する親友を冷めた目で見つめた。
「ポイントを高配分するために、時間が犠牲になったのだ……! 」
聞いてねぇな。
「一昨年まで棄権者も多く、お飾り競技だったパン食い競走。去年、一念発起して焼きたてを企てたが参加者が出ても惨敗! 今年こそは熱く! ……と三浦センセーが言ってた」
「給食懇願しに行って却下されたセンコーじゃん」
「三浦先生って……ああ! 古典の! 」
なんかいつ見てもなんか食ってるイメージしかない、よく肥えたセンコー。
「前置きはそこまでだ」
語りながらも俺たちは入場門に向かっていた。
「競技の説明補足だけじゃないの? 」
「それだけのわけないだろ~? あ、センパーイ! 」
前方に男子生徒がふたり。
「お? 隆一。おはよお~」
「昼っすよー! 斎賀センパイ! シュウちゃんセンパイもおつかれっす!」
「隆ちゃんおはよお~」
「だから、昼っすよ~」
飾り気などないのに華がある。
斎賀センパイと呼ばれた方は中性的な美人。
シュウちゃんセンパイと呼ばれた方は強気な美少年。
「あ! 超すごいのに隆ちゃんと親友の子だ! 」
「全校生徒ランキングトップ5にくい込んだんだっけか」
不思議な知られ方をしたもんだ。
「へへ♪ 大舞台、よろしくお願いしまっす! 」
は?
「一組同士、協力し勝ちにいきますよ。この五人でパン食い競走を制する ───!」
熱く語る。あまりに温度差が激しい。
「ねぇねぇ、鞠也ぁ。この子と僕、どっちが可愛い~? 」
「シュウちゃんに決まってんじゃん♪ ……ぷっ、ごめん。自分で言ってワロタ」
「鞠也、ネタはやりきろ」
「ダメだしワロタ」
俺をダシに何してんだよ、このセンパイたち……。
「よろしくお願いします……。普通に」
「よろしくね! そっちの彼も! 」
「あ、はい。センパイ方、よろしくお願いします」
譲が困った顔をする。
混ざりたくなかったんだな。
そうは問屋が下ろさねえ。
「ねじりチョコスティックは僕のだからね!
」
「メロンパンとかアンパンはくれたら嬉しい」
───自由だった。
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