君は書く人、僕は読む人。

知因子雨読(ちいんし・うどく)

君が書いた小説を僕は読む。

 君が書いた小説を僕は読む。

 僕が書いた小説を君は読まない。

 それは当然のことだ。


 本当は君にも読んでほしいと思ってる。

 でもそれは無理な話。

 だって君は小説の中にしか存在しないから。


 君の書いた小説も小説の中にしか存在しない。

 君も小説も存在しない。

 だから僕は君の書いた小説を読むために小説を書いた。


 でもそれは君が書いた小説のふりをした僕の小説でしかない。

 そんなことは承知の上で君の存在を信じたくて書いてるんだ。

 そうしないと僕はもうこの世界で小説を書くことが出来なくなる。


 じゃあ書かなければ良いように思われそうだけど書かないと死ぬ。

 だって僕は小説の中にしかいないから書かれないと存在しない。

 つまり君は小説の中の僕が書いてる小説内小説の中の君だ。


 だからさっきも言ったように君も小説も存在しない。

 そして僕も僕の小説も存在しない。

 ここにあるのはただ君と僕と小説の幻。


 小説がまだこの世に存在しなかった頃。

 君と僕は存在していたのかもしれない。

 でも今は書かれないと存在できない。


 君が書いた小説を僕は読む。

 僕が書いた小説を君は読まない。

 それは当然のことだ。(了)

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君は書く人、僕は読む人。 知因子雨読(ちいんし・うどく) @shinichikudoh

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