2-7 メンター

 里佳の報告を聞いて三国は大きく目を見開いた。


「花山さんか、またすごいの味方につけたねえ。現役の頃は近所の葬儀にはほとんど顔出してたんじゃねえか、花山さん」


 葬儀のバタバタでいっぱいいっぱいの遺族にそれとなく保険の払い戻しの手続きなどを伝える。葬式だけでなく、病気や怪我での通院をチェックしているのか、病院の近くにも頻繁に現れる。花山さんに紹介してもらった保険のおかげで助かった、そんなひとことが次の契約につながる。


「商売っ気がどうこうじゃねえんだ。葬式もそうだけどな、お互い様っていうか、そういうこった。そうだなあ、オレなんかよりよっぽどそういうの分かってるよ、花山さんは。里佳ちゃん、先生にすんなら花山さんだあな」


「わかりました。せっかくなんで明日もあの喫茶店に顔出してみます」






 その日の夜、浩人は一人で山川の店にやってきた。


「あれ、里佳ちゃんは?」


「なんか、ついさっき電話かかってきて、呼びだされたみたいで恐縮しながら慌てて走ってった」


「忙しそうだな。この店は暇だけどな」


「忙しいってことはないんじゃないか?」


「いや、慌ててるってことは忙しいってことだ。そして忙しいって字は心を亡くすと書いてだな」


「ああ、もう面倒だからいいよ。ビールもらうな」


「好きにしろ」


 浩人が二杯目のジョッキに口をつけたタイミングで里佳が店に飛び込んできた。


「なんだよ、落ち着かねえな」


「大変なのよ」


 里佳の目は大きく見開かれていた。


「何が」


「それが、あのね、花山さん、あのチラシだけで、もう六人集めたって」

 里佳の息が上がっていた。


「はあ?」

 浩人は呆けたように口を開けた。


「すごいの。何がって、とにかく大変なの。でね、飲んでる場合じゃないのよ。あのチラシ、作り直せって言われたの、花山さんに」


「どういうことだよ」


「いいから。行くよ、直すよチラシ。早く早く。山ちゃんごめんね」


「いいよいいよ。毎度あり」


「誰だよ、花山さんって」


 一気に空けるにはジョッキの残りは多過ぎた。

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