古い家の、筆頭分家の娘として育った「私」。
家には居場所がなかった。学校も、地域も、大人たちも、見て見ぬふりをした。気が狂いそうで。頭がどうにかなってしまいそうで。このままではどうにかなってしまう、どうにかしてしまうってずっと思っていた。
だから私は、夜の街を歩いた。家から逃げ出すように。家に帰らなくてもいいように。
そこで出会ったのは、不良と呼ばれる子たちや、夜職と呼ばれる人たち。世間からは白い目で見られ、SNSでは叩かれる人たち。でも、私の話をちゃんと聞いてくれたのは、いつもそちら側の人たちだった。
正しいとされる場所で傷つけられ、外れた場所で生かされてきた「私」が、夜の側から語る、小説みたいなものたち。
※収録作品には、家庭内暴力や喧嘩などの暴力、性暴力、自傷、自殺未遂、売春などについての描写が含まれます。ご自身の状態に合わせて、無理のない範囲でお読みください。
【収録作品】
不良だから悪い子とは限らないし、夜職だから悪い人とも限らない(全11話)
息の詰まる家を抜け出して歩いた夜の街で、「ゆめ」という子に出会った。不良だから悪い子なら、いい家の子だから、いい子なのかな。私があの人たちを悪く言いたくない理由について。
喉を、潰す。それもまた、青春の一ページ(全1話)
喧嘩となると、喉ばかり狙ってきた。出が速くて、力もいらなくて、何より静かだから。家では替えの利く部品だった私が、夜の街でだけ生きていると感じられた頃の話。
私が自殺しようとしていたお話(全5話)
帰省中、母は言った。「澪が死んだら私、生きていけない」。殴られ、演じ、夜の街に逃げ、それでも越えられなかった一本の線について。
私はハンニバル・レクター博士と結婚したい(全1話)
補導員も、おまわりも、スクールカウンセラーも、みんな大嫌いだった。夜の街に逃げた中学時代から、売春グループの裏方になるまでの話。
性的暴行と、妊娠検査薬と、売春グループと(全1話)
親友だと思っていた男の子にレイプされた。妊娠していたら、家に殺される。次の生理を待ちながら死ぬ前の挨拶を練習していた私が、売春グループに入るまでの話。
こんな私じゃ、どこまで行っても何者なんかにもなれないよ(全1話)
お酒を飲むと、ひとり暮らしの部屋が息苦しくなる。だから今夜も、ヘッドホンとタバコを持って散歩に出る。夜の街にも、普通の世界にも居場所をなくした「今」の私の話。
人を殺したい気持ちって、そんなに特別なものですか(全1話)
深夜の帰り道、知らない誰かとすれ違うたびに思う。ああ、今だったら殺せるなあ、って。恨みはない。理由もない。夜の街で覚えた「これ以上やったら殺してしまう」ラインが、今も見えてしまう私の話。
私は偽名を愛している(全1話)
カラオケの予約はサイトウ。ファミレスの受付板にはヤマナミ。夜の街では、澪。いくつもの偽名を使い分けてきた私が、本名を名乗れない理由と、「澪」という名前について語る話。
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