本作のタイトルは、北原白秋の詩『落葉松』からだと思うんですが…
詩の本来の結びは「わが足音のさびしきに。」です。
本作においてはその最後の一節が敢えて削ぎ落とされていて、この「引き算」こそが、物語の持つ最も痛切な核心を物語っています。
ここで描かれる孤独は、単なる家庭内での孤立や、一人きりの寂しさではなく、それは、同じ家で同じ空気を吸うことすら拒絶したくなるような、「父親とついに分かり合えなかった」という決定的な精神の決別です。
「わが足音のさびしきに」という感傷的な結びが除外されたのは、それが単なる個人の「寂しさ」の物語ではないからではと思いました。
美しい詩の引用の裏に、生々しく痛いほどの決別を描き出した傑作です。