最初は、非行に明け暮れる少年が恋人との出会いをきっかけに更生しようとする話だと思って読んでいたので、甚太が静江を脅し、暴力で支配するようになった展開がつらかったです。特に、静江が食事に毒を仕込み、涙を流しながらも幸せそうな表情を浮かべる場面には、追い詰められた彼女の苦しさと、もう後戻りできない関係の恐ろしさを感じました。しかし、死後に明かされる蜘蛛の正体によって、物語の印象が大きく変わります。未来の自分が過去の自分を救おうとしていたのに、過去の自分には気味の悪い虫としか見えない。最後に冒頭と同じ光景が繰り返されたとき、甚太が自分の過ちを理解しても、それを犯す前の自分には伝えられないという絶望が残りました。救いを求める行為そのものが、救いを拒む人間によって踏みにじられる。この終わり方が、何よりも後味の悪い物語でした。