遺影を撮る仕事の話から始まるので、最初は人生の終わりを見つめる静かな物語なのかと思った。けれど、主人公の生活が描かれるにつれて、酒と薬で記憶を曖昧にしなければ眠れないほどの孤独が見えてくる。13歳の夜の描写は、暴行そのものだけでなく、翌日の学校のためにジャージを洗い、何事もなかったように食事をする姿がつらい。助けを求めることさえできなかった子供が、その後どんな人生を送ってきたのか。復讐の場面では、撮影用のカメラが凶器に変わる展開に息をのんだ。そして最後、父の遺影に語りかける一言。復讐を遂げた爽快感よりも、長い年月を経ても埋まらなかった何かが残る。冒頭の「遺影は死者の生前を悼むためのものだ」という言葉が、読み終えた後にはまったく違う重さを持って感じられた。