人間は、命を与えられて産まれてきます。「生」の世界です。なのに皮肉なもので。その対極にある「死」の深淵にも。時折、堪らなく魅かれてしまう。手紙を契機に噛み合い、動き出してしまった、死に魅了された男2人。「死の深淵」は、我々人間にコントロールできるほど甘くはない。近づき過ぎたならば、その先になにが待つのか。耽美な世界観に酔いしれながら、あらためて深淵の危険性を自戒したい。美しいホラーを読む贅沢な時間を楽しませていただける作品だと思います。
友の手紙は、その健全ならざるものに惹かれる病んだ心をさらけ出していた。私は知っていた。否、見えていた。それがいかにおぞましいものであるか。ああ、見て知っていたはずなのに、私は見るのをやめられない。友を止めることができない――。心の影に、そしてさらに深く禍々しいものに呑まれてゆく恐怖。