束縛の激しい恋人から逃れるために、ユリの花に蛾を仕込んで事故を誘発しようとする。その計画が本当に百合の死につながったのかは明確に描かれないまま、達也は彼女の死に安堵する。だからこそ、その後に背後の気配を感じ、窓ガラスに事故当日の姿を見つける展開が不気味だった。特に、百合が達也の渡した花束を抱えているという最後の描写が印象に残る。彼女を死なせるために利用した花束が、死後も続く二人の関係を思わせるものになっている。「ずっと一緒にいようね」という生前の言葉も、結末を読むと別の恐ろしさを帯びてくる。望んでいた別れは、相手の死によってさえ完成しなかったのかもしれない。