額に卵を産みつける「うみがめ」を、町の人々が当然のように守っている。その異様な世界に慣れた頃、転校生の死と母親の登場によって、守っていたものの正体が明らかになっていく展開が見事でした。とりわけ印象に残ったのは、娘を奪った怪異が、母親の記憶を読み取り、娘に似た存在を作り出す結末です。それは謝罪なのか、母親の願いに応えようとしたのか。それとも、人間の感情を理解できない存在が、記憶をなぞっただけなのか。最後の「オカアサンだったんじゃないかな」という言葉も、怪異への恐怖を消し去るのではなく、むしろ別の問いを残します。人間を犠牲にしていた存在を、それでも母と呼べるのか。まだ深層心理に精神汚染が残っているのではないかというザラつきが残ります。