私が住んでいる地方都市でも、小さい頃から親しんで来た映画館は全て無くなりました。函館もそうらしいです。
シネコンはキレイで便利ですが、何だか味気ないんですよね。昔ながらの場末映画館で、入口で券をもぎってもらって、早めに行って良い席を取って、気に入ったらもう1回観たりして、そういうところが良かったんです。
おばちゃんの売店でお菓子とコーヒー買って、次は何やるのかポスター見て、チラシを取って、パンフレットも買って。今じゃ歳とって、映画は3時間近くあって、コーヒーなんか飲んだら途中でトイレ行かなきゃいけない。トイレがまた古くてあんまりキレイじゃなかったりしたんだよなあ。
でもそんな映画館で映画を観る体験が出来たことは幸せなのかも知れません。そんなことを感じさせてくれたエッセイでした。
函館という街の情景、そして映画館という場所が持つ温もりと哀愁が、全4話というコンパクトな構成の中に美しく凝縮された素晴らしい現代ドラマです。
失われていくものへの郷愁と、胸の奥にしまい込まれていた青春の記憶が鮮やかに蘇り、ページをめくる手が止まりませんでした。登場人物たちの等身大の葛藤や、街の灯りとともに揺れる心情が非常に丁寧に描かれており、読後には温かい余韻が胸に残ります。
短編でありながら一本の上質な映画を観たかのような深い満足感を味わえる一作です。心に染みる人間ドラマが好きな方に、ぜひおすすめしたい作品です!