長年、国の為に尽くしていたヒロインの聖女が、国ぐるみで冤罪を被せられて処刑されそうになっていた所に、助けが来て……
という、設定だけを見ればテンプレっぽい話ですし、実際ヒロインを嵌めようとする悪人達には報いが振りかかる一方で、ヒロインは愛を育んでいく。
しかし、実際の内容は、まるで法廷で裁判を繰り広げるかのような『議論』の応酬であったり、既成概念を壊す新しい技術の試みで奮闘するのが満載です。
第一話はヒロイン処刑の妥当性自体を問い正し、第二話は理不尽にヒロインを拘束しようとする命令の正当性に異議を唱え、第三話は病で苦しむ者達を既存のやり方では救えないと医者を説得する。
その後も事あるごとに、ヒロインを「備品」として連れ戻そうとしたり、新技術の導入を阻もうとしたり、災害の責任を押し付けたりされそうになる度に、実績・公文書・伝票・帳簿などに基づいた明確な証拠・証言を武器に、理論だって議論が交わされ、最終的にグゥの音も出ないほど説き伏せる様は、まさしく法廷闘争バトルそのものです。
一見、読みやすいざまぁ作品ともとれます。しかし、読み進めてみたらどうでしょう。
権力の暴走、腐敗。
どのようにして冤罪を晴らすのか。
責任はどこにあるのか、文明が用いている技術は、どこまでが「できること」でどこまでが「できないこと」なのか。
自分の読み方が悪かったのか、あるいはあえて省略がなされているのか、専門用語や人物たちの背景に関して、いくつかわからないところも多い作品ではありますが、物語を追ううちに、あまり気にならなくなります。
規則を恣意的にねじ曲げ、不正を働いた者たちが、正しく規則を用いることができる人々によってその隠蔽してきた悪事を暴露されていく、その道筋こそが重要なのですから。
でもこれは、ファンタジーではないのです。不祥事を起こした企業や政治が隠蔽に奔走し、結局は隠しきれずに嘘が破綻するさまによく似ているのです。
規則や記録は何のために残すのか、責任者は何のためにいるのか、その責任の取り方とは何なのか。現代社会の風刺とも取れる面白さを感じました。