作者なら、登場人物の運命も、世界の結末も自由に決められる。
そのはずなのに、鼻毛一本が言うことを聞かない。
世界を救わせたい作者と、鼻毛を観察していたい男。この二人の会話が、最初からまったく噛み合わなくて笑ってしまう。
作者が持ち出す手段は、どんどん大げさになる。 鼻毛男の関心は、一向に広がらない。
この温度差が絶妙です。
作者が必死になるほど、短い返事の破壊力が増していく。
キャラクターが勝手に動く。
とはよく言いますが、この男は作者の望む方向へ一歩も動かない。その徹底ぶりが、馬鹿馬鹿しいのに妙に格好いい。
鼻毛しか見ていない男から、読者は目を離せなくなる。
作者の皆さん。 生み出せたからといって、従わせられるとは限りません。
登場人物の運命を決め、世界を作り、気に入らなければ存在そのものを消すことさえできる。
ところが、この男だけには通用しない。
鼻毛男。
一本の鼻毛を測り続ける男。
作者がどれだけ権力を振りかざそうと、どれだけ世界を動かそうと、彼の関心はただ一つ。
7.2ミリ。
この作品の凄いところは、鼻毛男が作者を倒そうとすらしていないことだ。
反抗でもない。挑戦でもない。
そもそも勝ち負けに興味がない。
作者が必死になればなるほど、鼻毛男の揺るぎなさが際立っていく。
そして最後には、創造主と登場人物の立場が逆転する。
自分を生み出した神にさえ、自分の生き方を譲らない。
これは一本の鼻毛をめぐる不条理コメディであり、誰にも支配されない男の物語だ。
鼻毛男シリーズ、最終回なのは寂しいてすが、登場人物にとって最強のラスボス。作者。
これ以上ない最高の幕引きだと思いました。
鼻毛男、永遠に