第一章 アウラの覚悟1
「あー、これから私ヴェラが教師としてアウラに勉強を教える事になった。よろしく頼む」
「はい!ヴェラ先生よろしくお願いします!」
「元気でよろしい、それでは予習から始めよう」
資料室に通い始めてから一月の時間が経った。
資料室に置いてあるデータで勉強をして一部では専門知識も学ぶ事ができたがアウラには不満もあった。
この施設には仕事が無いのである。
何せ全自動なのだ、ドアがひとりでに開くしボタンを押せば食事が出てくる。
ならばとフリーダの手伝いを申し込めば資料室にない知識がぞろぞろと出てきて手伝う事ができなかった。
ならばと再び立ち上がり仕事は無いかと歩き回ると其処には暇そうにしているヴェラが居るではないか。
アウラは親近感を覚えた、ヴェラはアウラと同じく仕事を探しているのだと確信した。
しかしヴェラはそれを認めようとはしなかった。なのでフリーダに聞きに行くとなんでもヴェラも専門職なのだとか。
しかしだ、フリーダはこの一月に仕事と言って戻らない日があった。
しかしヴェラにはそれがない、つまりヴェラはアウラと同じく無職である可能性が高いのだ。
フリーダのヴェラは専門職という発言は古い情報に違いない、でなければこんなに暇そうに施設を徘徊してはいないだろうとアウラは一人考えていた。
ならば二人で職を探すしかない、ヴェラの持つ専門職を聞いてもはぐらかされるので教師をして欲しいと頼み込みどうにかして専門性のある知識を教えてもらおうとしたのだ。
ヴェラに頼むと意外にも教師を承諾してくれたので資料室にてヴェラの授業が始まった。
「さて、まず初めに観測史上初めての歴史的な観点の出来事とは何か答えなさい」
「はい、文明大崩壊です!」
文明大崩壊とは。
以前の人類は空の彼方、宇宙を航海する船の建造などを成功させていた。
しかし文明大崩壊により人類は数を減らし、衰退し、蓄えた知識も一気に失ってしまった。
残された一部の知識も失われた知識の中に基礎があり現在では完全にロストテクノロジーの一部にされている。
「正解だ、よく勉強しているな」
「はい!頑張りました!」
「それでは文明大崩壊の後に人類が目覚めたとされる能力の名称は?古い順に答えなさい」
「はい!最古は奇跡、続いて神秘、秘して秘術、異なり異能、最新一般の総称は能力と呼ばれています!」
記録にある最初の奇跡は石をパンに変える能力だったとか。羨ましい能力だ。
「これも正解だ、良く学んでいるね」
「はい!」
資料室での勉強はアウラにとって唯一他者の役に立てる事だった。
その為今回の授業はアウラにとって自分の成果をヴェラに見せ自分はもっと役に立てるとアピールするチャンスの場でもあるのだ。気合いが入ると言うものだ。
ヴェラはそれを感じ取っていた。
上からの通達によりアウラに教育を施す事を提案された時は子供を戦地に向かわせる気かと反抗したが教育の方向性については一任されている。
ならば争いとは別方向に伸ばしてやればいい。
能力者だからと争いに行かなくても良いとヴェラは考えていた。
しかしヴェラはそこまで勉強ができる訳ではない、一般教養に毛が生えた程度の知識量だ。
生きる上で必要な知識は生きる環境によって違う。それを授業と言う形で席に着いた途端に痛感した。
なのでこちらに近づく足音を捉えた時、内心歓喜した。今か今かと扉に目をやればようやく望んだ人物が顔を見せた。
「やぁ、今日は二人で勉強かい?」
フリーダである。
こう見えてフリーダは勉強ができる。
自分の専門から別分野もある程度知識として蓄えているのがこの変人だ。普段ならば鬱陶しい存在が今日ほど頼もしく思ったことは無い。
「フリーダ、待っていたよ」
「君が私を待つ?…すまない、今手持ちの薬がないんだ。部屋に戻ればある程度の不調なら治せるが…」
「そうじゃない、まぁ座ってくれ。私は飲み物でも取ってこよう」
不穏な空気を感じ取り逃げようとするフリーダの肩を掴みアウラの横に座らせる。
こうしておけば後は勝手にやるだろう。不向きな仕事は他者に任せ後で口を挟むぐらいが丁度いい。
ヴェラは部屋を出て食堂へと足を向けた。
時間は昼に近い、どうせ資料室で食事を取ることになるだろう。丁度飲み物という口実もできた。
そう考え食事を人数分確保に動いた。逃げたともいう。
部屋から出て食堂に向かう最中不意に足を止める。
常人では気が付かない、小さな小さな違和感。
森の中で小さな虫とすれ違う様な、気にしなければ気が付かない、そんな違和感。
「何か用か?今この基地は閉鎖されているはずだが?」
自身の前方に声を投げる。
敵意は無いが本来居るはずも無い人員。
気にするなという方が無理というものだ。
幸いここから資料室はそれなりの距離がある、多少話したところで会話は聞き取れないだろう。
ぬらりと一部の床の色が変わり人の形を取る。
すぐさま膝立ちの姿勢になりヴェラに向かい礼の姿勢をとる。
「お待ちしておりました、隊長。アルカディアでの報告を…」
「ここでか、先に本部に回せと通達は行ってなかったか?」
「…こちらに報告する様にとボス直々に。」
「はぁ…わかった。隠密は解くな、歩きながら聴く」
どうやら面倒事を投げるのは自分だけでは無いらしい。
深いため息を吐き、先程より幾分か重い足取りで食堂へと向かった。
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