線の向き、記録の間隔、時計のわずかなずれ。
この作品の推理は、そうした小さな違和感を一つずつ拾って、丁寧に詰めていくタイプです。
中でも、揃いすぎた記録を「人間が迷いながら残したものではない」と読む場面には唸りました。
派手なトリックを一発で見せるのではなく、論理を積み上げて読者を納得させていく。本格ミステリ好きにはたまらない手触りです。
それでいて会話のテンポがよく、手がかりの多さのわりにまったく迷子になりません。緻密なのに読みやすい。この両立が見事です。
「尾は七本、殺人は九尾」という数の食い違いが、どう回収されるのか楽しみにしています。