老いた独裁者に、科学者が提案する「永遠の支配」。自身の思考をコピーしたAIに国を任せれば、死後も君臨できる――その願いに潜むアイロニーが、鮮やかに効いているSF寓話です。
自分の思考が残ることと、自分自身が生き続けることは同じなのか。独裁者にとって都合のよかったはずの提案が、読み進めるうちに別の意味を帯びてきます。
童話のような平易な語り口で描かれる、人間関係の冷たさも印象的でした。従順であることと、相手を大切に思うこと。その違いが、短い物語の中に浮かび上がります。
権力への執着と、それを取り巻く人々の打算。結末から振り返ると、冒頭の光景まで違って見える、余韻の苦い一編です。