誰にも読まれない小説を書き続ける少年と、彼の文章を誰よりも深く読んでいた、たった一人の読者。言葉の選び方がとても印象的で、静かな情景描写の一つひとつが、少しずつ不思議な世界へと読者を誘ってくれます。しかも、作中に「汀」という字が登場した瞬間、思わずドキッとしました。自分のペンネームに使っている漢字と、こんなところで出会うとは。創作すること、読んでもらえること、そして自分の書いた物語が誰かの世界を変えてしまうこと。幻想的な設定の奥に、創作者ならではの喜びと怖さが息づく作品でした。