作業も休憩も厳密に管理された解体工場。そこでは、恐ろしい監視者の存在が無機質な空気を作り上げていました。
そんな解体工場で働く「しらぎく」は、休憩時間にこっそりと倉庫へ行き、秘めた心を解放します。
しかしそれは、この解体工場において禁忌といえるものでした。
しらぎくが心を解放する様子は、とても耽美に感じられました。
しかしここは楽しい場所ではありません。解体工場を満たす空気の非情さを目の当たりにすることになります。
読後感を例えるなら、梅雨時にじーっと窓の外を眺めているときの感傷的な気持ち、という感じでしょうか。
ぜひこのしとしと感を味わってみてください!
倒錯した性的嗜好って、思わず距離を取りたくなるほど狂気じみているにもかかわらず、一部に理解ができるような怪しい魅力も携えていて、不安に駆られるというのに目が離せなくなってしまいます。
本作はそんな倒錯具合を煮詰めたような、怪しさ満点の魅力的グロテスクが詰まっており、読むほどに真に迫るような、ぞわぞわした不快な感覚が味わえることでしょう。
こういう「不気味で理解しがたい、でも少し理解できてしまいそうになる」という絶妙なバランスがまた大変素晴らしい。
つまりは「共感」というものに異質なものをぶつけ、認識を塗り替えようとしているわけですからね。
拒絶反応からくる不快感は、相応に強く、より深いものになること間違いなしです。
ディストピア感あふれる鬱屈した雰囲気も相まって、その倒錯した「病気(エラー)」の甘美さがより際立っているのもまた、不快なのに思わず魅入ってしまう、怪しい魅力の一つなのかもしれません。
実に見事に「病気(エラー)」を描いた怪作です。
ぜひ御目通し頂いて、怪しくも目が離せなくなる不快感に、心の内をぞわぞわとさせてください。
美しい文体と優れた描写によって広がっていくどこか異様な世界観。
その中でしらぎくは淡々と過酷な業務をこなしつつも自分の中に芽生えているちょっとした異常を否認、あるいは隠蔽しようとしている。
その意味は物語が進むにつれ明らかになり、やがて破滅へと進んでいく。
この作品は優れた叙述トリックであり、また無機質なディストピア世界とそこに息づくあまりにも痛切で美しい感情のコントラストが強烈な余韻を残すSF短編作品です。
冷たい金属と柔らかい白布の質感、そして滅びゆくものの美学に浸りたい読者にぜひ一読をおすすめしたい傑作です。
毎日、変わりもしない工場のラインが
目の前に 対象物 を流して来る。
十一時間もずっと立ちっぱなしで目の前を
流れるソレらを見送るのだ。
病気や怪我は厳禁だ。
何故ならば。見つかり次第、即座にクビを
切られてしまうから。
そんな日々の業務の中には
秘やかな愉しみがある。
秘密の倉庫に忍び込んでは、その中に
吊るされ収納されている 白い布 たちの
中へと入って行く事。
それは決して知られてはならない
背徳の歓びだった。
ハイクオリティな ホラー には定評のある
作者の、SFか…将又、SFの貌をした
ホラーなのか。
最後に 工場 の正体が明るみになるも
そこは皆目、藪の中。それでも矢張りこれは
ホラーであると思うのだ。