冒頭の文章からして、かなり人を選ぶお話です。
虫。しかも芋虫。その残骸がポトリポトリと足元に落とされていく物語です。
人によっては生理的嫌悪を催すこと必至ですが、目を背けたくなるのをぐっと堪えて読み進めることで、次第に惹き込まれます。
客観的に見れば酷く悍ましいこの物語を「美しい」と感じさせるのは描写の妙です。
主人公は幼くして両親の離婚、母親の自殺を経験した小学生の男の子。
そして彼が転校先で出会う同級生、紋白蝶を思わせる可憐な少女。
蝶のようにヒラヒラと振る舞う彼女の言葉や仕草はどこか危うく、蠱惑的で、時に官能的な熱を帯びます。
仄暗い少年少女の密か事。
そして訪れる結末は、蛹から蝶が羽化する瞬間を見るようでした。
間違いなく人を選ぶお話ではありますが、退廃的な情緒と美しい読後感を味わえる文学作品です。