第11話 パイロットの負荷を下げた新方式-実験が最終局面を迎えている-

 では、パイロットの負荷を下げた新方式とは?

 その次世代方式というのが、首の後ろに集まっている神経系を医学的に切断して分岐させる装置を埋め込む、というものである。

 人でいる時は全身に神経を接続し、レイドライバーに乗る時はその神経系をレイドライバーに直接結ぶのである。そしてサブプロセッサーを介してだが、直接結ぶことでパイロットはまるで自分の体のようにレイドライバーを操る事が可能になり、耐えられないほどの刺激があった場合はサブプロセッサーがその信号をアブソービングしてくれる。

 さらに言えば、パイロットは操縦中に中で体が暴れる事もないし、操縦系統の機器類を設置する必要もないのだ。

 そうすれば、万が一拿捕された際に起爆に失敗して相手側にレイドライバーを奪われたとしても、パイロットさえ[何とか]してしまえばその操縦は容易ではなくなる。何しろ操縦に関するものが何もないのだから。

 極端な話、このシステムだとモニターとパネルだけ設置すればいい事になる。無線やモニターの切り替え等は音声認識システムや視線追従システムを使えば手を使わなくても出来るし、そうする予定になっている。

 この、スイッチャーと研究所内部で呼ばれる神経系の切り替え機はつい最近実用化に成功した、という事情もあって第一世代には採用されていない。

 だが、これは現在のシステムでも似た事は出来る。

 そう、前述のクリスの件である。彼女はサブプロセッサーとの直接リンクを構築する際、四肢の神経系をレイドライバーの操縦に回したのだから。

 今回の方式と異なるのは、それを常用するように作られているかどうか、である。この医学的処置によりパイロットに対する負荷を下げての運用が可能となったのだ。

 クリスの例は、あくまで非常的な使い方、つまりリンクする時だけ体には局所麻酔をかけ、脳の信号だけでレイドライバーとやり取りする、そんな荒っぽい使い方をして実現した。

 そして、パイロットの子宮は、クリスたちの機体の第一世代とは異なり、サブプロセッサーとのリンクに使用するのだ。そうする事でよりワイドな動きが出来る。

 第六感、という言い方が一番適切なのかもしれない。パイロットが行動したり思考するとほぼ同時にサブプロセッサーが意思を汲み取り具体的な資料を出したりという行動に移す、そんなシステムが出来上がる。さらに、ダメージや熱感といった情報はアブソービングはするものの、直にパイロットに渡す事が出来る。

 子宮のリンクはこのシステムになっても重要なのだ。

 実際、目の前のパイロットたちは先程から身動き一つしていない。

 この世代では、パイロットの脳と子宮でリンクを行うというそのシステムの為、サブプロセッサーには近親者の女性が必要なはずである。

 だが、それらの問題を克服した、画期的な方法。

 従来から千歳博士が提唱してきて[プロトタイプ]は一体だけあるものの、それがようやくここになって量産の実現しそうな方法。それが、それぞれ固有の遺伝情報によらない、情報伝達を無理なく行き来させる事の出来る装置なのだ。

 では、その方法とは一体何か。

 それは、リンクさせたい二体の遺伝情報を使用して、いわば[子供]を作って目的の器官になるまで[育て]て、その[子供]を使いパイロットとサブプロセッサーとリンクするというものなのだ。

 その子宮同士でリンクする関係上、サブプロセッサーの子宮だって必要なはずなのだが、この[子供]を使う事であらゆる信号をやり取り出来るのだ。ある意味この[子供]はサブプロセッサーにとって子宮の代わり、ともいえる。体を持たない、脳だけになったサブプロセッサーにとってはパイロットと無理なくリンクする為に必要な器官なのだ。

 つまり、正確に言えばパイロットとサブプロセッサーの間に生まれた[子供]の[部品]である。

 こうすれば現在の専属という問題も含めて、サブプロセッサーにパイロットの近親者を用意するという事からは解放される。

 サブプロセッサーには女性を使用しないといけなという制限はあるものの、これは大した問題ではない。何故なら人類の約半分は女性なのだから。

 第一世代のように近親者を使用している事を隠している現在、フィルタリングをかけているサブプロセッサーとのリンクも気にせずダイレクトに行える。

 さらに言えば、第二世代では自我を残したサブプロセッサーを搭載する事になっている。そうすれば、最悪パイロットが死亡した場合でもサブプロセッサーが操縦を交代して単独で帰還出来る。

 そう、パイロットと意思疎通が出来るのだ。

 そして、何よりコアユニットを使用しない為、サブプロセッサーは別として耐用年数を気にしなくても済む。

 だが、一機目には念のため近親者の母親を使用している。この母親と一卵性双生児である自分の子供のパイロット二人、一卵性なので実質一人ではあるが、との間の[子供]を作り、パイロットの子宮から出るシグナルを受信して脳に送る。それを脳で受信してリンクに使用している。

 こんなのはもう近親相姦とかいうレベルではない。そんな身の毛もよだつ実験を今、まさに行っているのだ。

 二体目のケンタウロス型にはその技術によって、姉妹である二人のパイロットと赤の他人のサブプロセッサーの、それぞれの[子供]を接続して、実用段階までほぼ目前というところまで来ているのだ。

 また、この方式だと色々な形態のレイドライバーを生む事が出来る。

 そして今、実験が最終局面を迎えているのが、目の前の二人の人間である。

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