古書店の二階でひっそりと暮らす南部与七郎は、自らを「浪漫人形師」と名乗る少し風変わりな青年だ。人形とは無縁の奇妙な事件ばかりが舞い込み、彼の傍らにはいつもヴァイオリンを奏でる少年がいる。童話めいた出来事の裏に、人の心の影や“DOLL”の気配が静かに揺れる。大正帝都の空気と、人形師の孤独な感性が重なり合い、どこか懐かしくも不穏な世界が立ち上がる一編。帝都の片隅で紡がれる小さな謎が、読後にやわらかな余韻を残す。