「イマジナリー・クウ」というどこか胸を惹きつけるタイトルと設定に惹かれて読み始めましたが、短編とは思えないほど濃密で美しいドラマ性にすっかり心を奪われました。登場人物たちの細やかな心理描写や、物語全体に漂うエモーショナルな空気が非常に丁寧に紡がれており、ページをめくる手が止まりませんでした。読み終えた後もしばらく心地よい余韻に浸りたくなるような、素晴らしい読後感を味わうことができました。
空想の果実「カミマム」で孤独を紛らわせる澪と、深夜のコンビニで働く上馬。二人の奇妙な会話に、いつの間にか引き込まれていました。軽口の間から覗く疲れや、自分を粗末に扱ってしまう言葉が痛い。それでも、相手の小さな変化を見つけ、笑い合う場面には温かさを感じます。親密になるほど、優しさも危うさも近づいてくる。二人が見つけたものを簡単に幸福とは呼べないけれど、その時間を否定する気にもなれませんでした。生々しい描写を含む、孤独とつながりの短編です。