第二章 オッヤ・ノスネカ・ジィリの誤解を解け!
第5話 オッヤ・ノスネカ・ジィリは激怒した
https://kakuyomu.jp/users/Shitihuku2020/news/11054822664493911348
こちら新キャラ立ち絵です。よければタップしてご覧ください。
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「まず魔術師のオッヤ・ノスネカ・ジィリはとても優秀だった。オッヤ・ノスネカ・ジィリは常識を知らない俺に対しても様々なルールを教えてくれた。それだけじゃない、オッヤ・ノスネカ・ジィリは斥候ではないのにもかかわらずとにかく勘が良くその洞察力で仲間を助けてくれることが」
「ちょ、待て、ストップ」
アザヤカがワインからメンバーのそれぞれの特徴について詳しく聞いている時、あまりにも異様な文字列が並びすぎたため思わず手を前にやった。
「その、なんて?」
「ん? オッヤ・ノスネカ・ジィリの話だが。君がメンバーについて紹介をしてくれと言ったからまずオッヤ・ノスネカ・ジィリについて話そうかと思いオッヤ・ノスネカ・ジィリの魔術や勘の素晴らしさを説明すべきだと思い」
「うん、わかった。アタシの聞き間違いじゃないのは理解した」
アザヤカは再び頭を抱えた。
「えっと、その名前ってなんだ?」
オッヤ・ノスネカ・ジィリは、魔法学者の家系に生まれた18歳の女性である。オッヤが名であり、ノスネカがミドルネームであり、ジィリが姓だ。仲間からは、カジというあだ名で呼ばれている。身長は150cmほどと小柄で、金髪をツインテールに結んでいる。大きな三角帽子を被っているのは、少しでも背を高く見せたいからだ。
彼女のこの異様すぎる名前について弁明を行うと、親が悪意をもってこのような名前にした訳では無い。それどころか、彼女の両親はオッヤ・ノスネカ・ジィリを可愛がっており、「こんなに可愛い子が生まれたのだから神様に名を決めてもらいましょう」と言って神殿へ占いにいったら、このようになっただけだ。
信心深い司祭も、この時ばかりはさすがに汗をかいた。「もう一度占い直しましょうか」と確認はしたが、彼女の両親が「神の御心のままに」と言ってそのまま気に入ってしまったため、司祭は将来大きくなった彼女から刺殺される覚悟すらした。
悪意なくつけられた名前がコンプレックスとなった彼女は、周りから名前を笑われているのではないかと気を張り詰め続けた。その結果、本人も気が付かぬうちに第六感が目覚めていた。そうして、人一倍気遣いのできる女性へと育っていったのだ。だが、それも万能というわけではなく、あくまでも身近な人間の行動を人一倍鋭く察知できる程度のものだった。
アザヤカは、写影機で撮られたパーティ集合絵を見た。ちなみに、ワインは写影機を向けられると魂を取られると思い込んでいるため逃げようとした結果ものすごく姿がブレている。
「お前さ、ちょっと聞きたいんだけどその……魔術師のやつから名前で呼ぶなって言われたことねーのか?」
「ないな」
「あー……じゃあ、聞き方変えるわ。名前とかあだ名で呼んでくれ、って言われたことは?」
「それはある。だが、深く親しいわけではない女性を名で呼ぶのは礼儀がなっていないと感じたため断った」
「うんお前多分それも原因だと思うぞ」
ワインがパーティに入りたての頃の話である。
『あ、あのさ、ワイン君! その、そんな堅苦しい感じに呼ばなくていいよ! あたしのことはカジってあだ名で呼んでくれればいいから……!』
ワインは真っ直ぐな目で答えた。
『いいや、フルネームで呼ばせてもらう。これが俺の礼儀だ』
「ということがあった」
「お前マジで変なところで真面目というか古風なのがなぁ……!!」
深夜まで営業している食事屋だからといって、少ししか注文せずにダラダラと居座るだけでは店員に怪訝な顔をされる。アザヤカは、だるそうに仕事をしている店員を呼び止めポテトとサンブライトピザを注文した。
「彼女もそれに対して了承をしたためそのままフルネームで呼び続けた。俺は彼女の名前をおかしいと思わなかった」
「了承したっつうか、多分名前で呼んで欲しくねえって直接言えなかったんじゃねえかな……」
カジは自身のコンプレックスについて、一度も公言したことがなかった。それは、アザヤカの予想通り、自分の名前がコンプレックスであることをそもそも知られたくなかったからだ。
しかし、その異様な名前とあだ名で呼んでほしがるカジを見て流石に人々は彼女の内心を察していた。だから皆、空気を読んで彼女のことをあだ名で呼んだが、残念なことにワインは全く空気が読めなかった。
「いやちょっと待てお前アタシのことは普通に名前で呼んでるじゃねーかよ」
「…………」
「なに急に照れてんだよ」
「いやあ……」
ワインがモジモジし始めた。
「アザヤカは、昔からの付き合いだから……これで慣れてしまった……」
「なんなんだお前…………」
ようやくサンブライトピザとポテトが運ばれてきて、アザヤカがさっそくポテトをつまむ。ワインがその様子をじっと見ていることに気がつき、ポテトとピザをきっちり半分に分けてワインへと渡した。
「……じゃあとりあえずだ」
サンブライトピザにかかった赤いパプリカソースが、食事屋の明るい電灯を受けて艶やかに光っていた。
「まず最初に、原因がいちばんハッキリしてそうなその魔術師のやつに話をして……ッ!?」
そこまで話した瞬間だった。
アザヤカの目の前に、映像が流れ込んでくる。ジリ、とノイズが走り、膨大な情報が一瞬にして頭の中へ押し寄せた。
彼女はこれがなんなのか分かっていた。
予知だ。いつもこうやって、突然断片的な情報が見えてくる。
そして、今見えた予知というのが……
金髪ツインテールの女性が、大きめの岩の下敷きになって「きゃーー!!」と叫び、バタバタしている映像だった。
「…………」
「アザヤカ、どうした?」
「なあワイン、お前地理とか詳しい?」
「サンブライトから魔王城に行くまで最もなスムーズな道筋についてとその道中の特徴は約563個覚えているがそれ以外には詳しくない」
「うん平気そうだな」
アザヤカは、家の中に一度放り投げてきた荷物を思い出した。やはり、旅支度をして正解だったなと考えながら苦笑いを浮かべた。
「ちょっと……アタシがなんかの景色の特徴を言うから、その場所がどこら辺なのか予想してくんね……?」
こうして、二人はカジことオッヤ・ノスネカ・ジィリを探すことになったのである。
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