良い感じの百合ものかと思っていたら、まさか「美味しすぎるから食べられる」という方向へ転がっていくとは。しかも、華さんが食べれば食べるほど希少になり、最後には「この奇跡の火加減を再現できない」という理由で研究対象にまでなってしまう。美味しさゆえに乱獲され絶滅した……リョコウバトだっけ?を連想しましたが、こちらはさらにおぞましい。人間が「こんなに美味しいもの」を見つけたら、食べるだけでは終わらず、再現しようと研究する――その妙に現実的な欲望が、軽妙な語り口のまま最後まで貫かれているのが怖い。そして結局、主人公にとっていちばん幸せなのは「華さんに食べてもらうこと」なのだから、最後の「天国みたいな匂い」が妙に美しく残ります。