彼女は怪物。たとえ怪物に襲われて、その在り方を変えられようとも、芽吹き、開花したその様は怪物以外の何者でもなく。けれど、怪物に人の心の残滓が残っていてならぬ訳もなく。残された人の残滓で、彼女は月の姫になりたかったと哀しみを漏らす。あまりにも凄絶な、ルナティック・ロマンス。
「お姫様になりたい」という願いが痛々しく響く……主人公は傷つけられることを望みながら、かつて自分を壊した彼からは逆に傷を労わられているという不気味な矛盾が恐怖を産んでいます。追い打ちのように、「お腹を、裂くのを、許してほしい」という言葉と、「お姫様になりたい」という言葉が同じ人物から出てくることで、愛されたいのか、壊されたいのか、その境界が曖昧に不穏になっていきます。月明かりと地下のモニターの光まで重なる終盤の寂寞感が強烈です。