円つみきさんの『あの夏の残像 ―Side T―』を、彩香の側から描いた物語。
拓哉の側から見ていたときには掴みきれなかった彼女の言葉や行動も、彩香の内側から読むと、ずいぶん違って見えてきます。
特に印象に残ったのは、彩香のどこか潔癖なところでした。
相手に対してというより、自分自身に対して厳しい。
好きだから、幸せになりたいからといって、自分の中にあるものを簡単に乗り越えられるわけではない。
だから、読んでいる側としては「この二人が幸せになるところも見てみたい」と思ってしまいます。
けれど、きれいなハッピーエンドにならないからこそ、あの夏と二人の関係が「残像」のように強く残るのかもしれません。
Side AとSide T。同じ恋を両方から味わえる。
二つを続けて読むことで、いっそう余韻の深くなる作品でした。