「生類憐れみの令」を、ひとりの少年が救えなかった子犬への罪悪感と、母親の凄まじい執念から生まれたものとして描く発想が印象的です。特に秀逸なのが、庶民が「人間の命まで守られるようになった」と語った直後、話している男の首から血が流れている場面。善意と狂気、人間への憐れみと見落とされた死が同じ場所に並び、最後の数行まで読者の認識を静かに揺さぶります。