料理魔獣ソース・ゴーレム!初めての料理魔法!

ゴゴゴゴゴ……!

 ラザニア城の地下厨房。

 巨大なソース・ゴーレムが、レオの前に立ちはだかっていた。

「グォォォォォッ!!」

 赤黒いソースの腕が振り下ろされる。

「うわぁっ!」

 レオは横へ飛び、間一髪で攻撃をかわした。

 ドォン!

 床に大きな穴が開く。

「こんなの……料理人が戦える相手じゃないだろ!」

 レオが叫ぶと、ブラック・シェフは冷静に答えた。

「料理人だからこそ戦える」

「え?」

「料理魔獣は、料理魔法でしか倒せない」

 ブラック・シェフが指を鳴らす。

 すると、床から一本の木べらが飛び出し、レオの手元へやってきた。

「その木べらを使え」

「これで……?」

「お前の料理人としての力を試してみろ」

 レオは木べらを握った。

「料理魔法……!」

 集中する。

 炎を思い浮かべる。


 だが――

 ポッ。

 小さな火が出ただけだった。

「ちっちゃ……!」

 レオ自身が驚く。

 ソース・ゴーレムは大きく口を開けた。

「グオオオオオ!」

「まずい!」

 レオは走る。

 逃げる。

 しかし、逃げてばかりでは勝てない。

「僕は……料理人になるんだ!」

 レオは厨房を見回した。

 トマト。

 チーズ。

 パスタ。

 バジル。

 そして――

「そうか……!」

 レオの目が輝いた。

「料理は、一人で完成させるものじゃない!」

 レオは材料を次々と集め始めた。

「トマトソース!」

 赤いソースが宙を舞う。

「チーズ!」

 黄金色のチーズが光を放つ。

「パスタ!」

 長いパスタが竜のように宙を駆ける。

「全部……一つにする!」

 木べらを大きく振った。

「ラザニア・ブレンド!!」

 ドォォォン!!

 七色の光が厨房を包み込む。

 パスタ。

 トマトソース。

 チーズ。

 ホワイトソース。

 肉の旨味。

 香草。

 そしてレオの魔力。

 すべてが重なった。

「いけぇぇぇっ!!」

 巨大なラザニアの盾が出現する。

 ソース・ゴーレムの攻撃を受け止めた。

「グ……グォ……!?」

 ゴーレムの体が震える。

「今だ!」

 レオは木べらを振り上げた。

「七層ラザニア・クラッシュ!!」

 七つの層が光り輝き、ゴーレムを包み込む。


 そして――

 パァァァン!!

 料理魔獣は大量のトマトソースとなって消えていった。

 静寂。

 レオはその場に座り込む。

「……勝った?」

 ブラック・シェフが近づいてくる。

「まだだ」

「え?」

「今の技……七層ではない」

「じゃあ、何なんだ?」

 ブラック・シェフは答えなかった。

 その代わり、レオの後ろから声が聞こえた。

「すごーい!」

「誰!?」

 振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

 白い料理服。

 赤いリボン。

 腰には小さなチーズナイフ。

「私はミーナ!」

 少女は笑顔で手を振った。

「ラザニア王国の王立チーズ工房で働いてるの!」

「チーズ工房?」

「そう! それより、あなたの料理魔法……面白いね!」

 ミーナはレオの手元を見る。

「その木べら……普通の木べらじゃないよ」

「え?」

「それは、伝説の料理人が使っていた――王の木べら」

 レオは目を見開いた。

「王の……木べら?」

 ブラック・シェフの表情が変わった。

「やはり……お前に選ばれたか」

「どういうこと?」

「その木べらは、初代ラザニア王が使っていたものだ」

 レオは木べらを見つめた。

 ただの木べらだと思っていた。

 しかし、その柄には小さな王冠の紋章が刻まれていた。

「じゃあ……僕がこの木べらを持っているってことは……」

 その瞬間。

 地下のさらに奥から――

 カァァァン……。

 巨大な鐘の音が響いた。

 ミーナの顔から笑顔が消える。

「そんな……」

「どうした?」

「これは……七層の鐘」

 ブラック・シェフが静かに言った。


「王国のどこかで、七層目の料理魔法が目覚めた証だ」

「それって……?」

 ミーナは震える声で答えた。

「伝説の七層ラザニアを完成させる旅が……始まったってこと」

 レオは立ち上がった。

 料理ノートを開く。

 そこには、今まで存在しなかった地図が浮かび上がっていた。

 最初の目的地。

「トマト火山」

 レオは木べらを握りしめる。

「行こう」

「え?」

「七層ラザニアを完成させるんだ」

 ミーナは笑顔になった。

「うん!」

 こうして――

 料理人見習いレオ。

 チーズ工房の少女ミーナ。

 二人の冒険が始まった。


 しかし、その様子を遠くから見つめる男がいた。

 ブラック・シェフ。

「七層ラザニア……」

 彼は小さく呟く。

「もし完成してしまえば……あの方が目覚める」

 その目には、深い恐怖が宿っていた。

「八層目の王――グラタン・ロードが……」

 そしてラザニア王国の空に、黒い雲が広がり始めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る