第2話 告白する前に振られた私の傷心小旅行(美波の視点)

私の名前は「内海 美波(うつみ みなみ)」18歳、広島県在住の花の女子高校生(3年)だ。自慢ではないが私の外見は優れていると思う。

黒く奇麗なサラサラのロングヘア、身長は162㎝で体重は秘密(女性の体重を聞こうとするなんてデリカシーがなさすぎるわ!)。

スリーサイズはB:83W:58H:84と出るところは出て、へこむところはへこんだ理想的なボディの持ち主である。

目も二重ですれ違う男子がつい振り返りたくなるような美少女である。


(神は2物も3物も与えてしまったのね。私はなんて罪作りな女なの……)


当然何度も告白をされている。しかし、そのすべてを断ってきた。

その理由は、私には子供の頃から好きな人がいたからだ。

その幸せ者の男性は私の幼馴染で、名前を「浦木 理也(うらぎ りや)」という。

しかしながらこの男はあろうことか私というものがありながら、他の女子に告白されて付き合いだしたというのである。私ではなくほかの女を選ぶなんて頭がおかしいとしか思えない。

それに、確かに私はまだ正式に告白こそしていなかったが、こんなに長く一緒にいたんだしすでに付き合ってるといっても過言ではないんじゃないかと思うのです。

しかし彼の考えは違ったようで、私のことは家族のようなものだと思っていたようだ。

そして大学はその泥棒猫と一緒の大学に行って同棲するとか、するとか、するとか……。

こうして私は自分の想いを伝えることすらできずに振られてしまったのであった。


ーーー


私は今三原港に来ていた。深手を負った心の傷を癒すため、子供の頃に見に行ったあの絵を見に行くことに決めたのだ!(ああ、なんてけなげな私……)

こんな私のような美少女に望まれるその名誉な絵は平山郁夫の『天かける白い橋 瀬戸内しまなみ海道』である。

この絵は2000年に生口島をはじめ、しまなみ海道の島々とそこを繋ぐ美しい白い橋を、171.2×545.4cmという圧倒的な大スケールで描いた作品である。


船を待つため待合室に入ると、どこにでもいそうなおじさんが一人、ポツンと座っていた。

その中年男性であるが、なんとなく、どこかであったことがあるような気がした。


(うーん……。どこにでもいそうなおじさんだし、きっと気のせいよね)


気にするのをやめ、一番前の席に座った。そうして待つこと数分、船が入ってくる放送を聞き船着き場へ向かう。


(このおじさんも一緒なんだ。こんな美少女と一緒に船旅をできる幸運を神に感謝することね!)


船に乗り込んだ美波は船の後部の甲板に立って出発を待っていた。

船が動き出すと海風がとても気持ちよく感じられた。

美波は風を受けつつ、海を見つめながら心の中でつぶやいた。


(瀬戸内の風に打たれながら、憂いのある顔で海を見つめる私……。これは絶対絵になるわね)


しばらくすると、


(う、揺れる波を見てたら気持ち悪くなってきた……。中に入って椅子にすわろう)


船の中に座りおとなしくする美波であった。


ーーー


船が生口島の沢港に着き、船を降りる美波。


(うぷっ、……とりあえず少しどこかで休まないと……)


フェリー乗り場の待合室の椅子に座りしばらくじっとしていた。

10分ほどすると船酔いも落ち着き、元気に歩けるようになっていた。

商店街の間の道を歩いていると和菓子屋さんがあり、そこで発見してしまったのだ。

そこお店には私の大好物である「レモンケーキ」が売られていたのであった。

レモンケーキを見つけたとたん、さっきまで気持ち悪かったことなど一切忘れ、目はまさに百獣の王ライオンのそれであった。即お店に入り注文をする美波。

「レモンケーキ3……いや、5個ください!」


お金を払い店を出た美波は自販機で紅茶を買い、防波堤の上に腰を下ろした。

そしておもむろに袋からレモンケーキを取り出し大きな口を開けて食べ始めたのであった。

まさに仕留めた獲物を食すライオンそのものであった。


(ああー、おいしい!この酸味ではなく、レモンの爽やかな香りがたまらないわ)


ここ生口島はレモンケーキの聖地として有名であった。

レモンケーキ5つを一気に平らげた美波は満足した顔で海を眺めていた。

しばらくして、お腹が膨れたせいかうとうとし始めたころ、不意に本来の目的を思い出した。


(そうよ、寝ている場合じゃないのよ。私は平山郁夫美術館にいって憂いのある表情であの絵を見ないといけなかったのよ!そうすることによって私もまた芸術へと昇華されるのよ)


本来の目的を思い出した美波は美術館に向かおうとした。


(多分こっちでよかったと思うけど、10年前の記憶なのよね……。こうなったら文明の利器を使うのよ!テッテレーン、「Y!マップ」)


スマホを天にかざしながらポーズを決め、心の中で大山のぶ代の声で叫ぶ美波であった。なんとなくその様はあの青いネコ型ロボットを思いださせた。


ーーー


地図アプリを見ながら美術館近くにやってきた美波。

入口がどこにあるのかをスマホの画面で確認しながら歩いていると、不意に足が地面の出っ張っていた部分に引っ掛かり、右足首を内側に軽くひねってしまう。

その足を地面につくと痛みが走り、「いたっ」と声を上げてしまう。

痛む足を引きづって、目に入った花壇の端の大理石に腰を下ろした。

そして自分の足の状態を確認していると、さっき船で一緒であった中年男性が胡散臭そうな笑顔で声をかけてきたのであった。

これが二人の10年ぶりの再会であったことはまだ二人とも気が付いていなかった。




【後書き】

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