とても美しいホラーでした。
古いカメラを覗いた瞬間から、「祖父は昔、恋人に一方的に別れを告げられた」という修平の知っていた過去が、少しずつ不穏な形で崩れていく構成が印象的でした。特に巧いのが、怪異を単なる恐怖現象として終わらせず、祖父から聞かされていた「眉の上の傷痕」と実際に目撃した出来事を結びつけているところです。女性を殺している男の顔が修平とそっくりであること、その男の眉に傷が刻まれることによって、修平自身が家族の知らなかった過去を体験させられている感覚が強まります。
そして何より、「写真」が最後まで恐怖の中心にあり続けるのが魅力です。肉眼では見えない女をファインダーだけが捉え、シャッターを切るたびに距離が縮まり、最後には修平自身の行方まで分からなくなる。そして現像された四枚目にだけ、紅葉の中で寄り添う男女の姿が残されている。ここで誰なのかをすべて説明しないからこそ、最後の一枚を読者自身が見てしまったような余韻があります。
「写真を撮る」という日常的な行為を、過去を覗き込み、怪異に近づいてしまう行為へ変えていく発想が、この作品の怖さを支えています。