第03話 アルコール

 初恋。


 それは小学3年生の時に習字塾で出会ったみかん味のキャンディをくれた子かもしれない。それか小学6年生の時にクラスで仲良く話をしていた小柄な女の子かもしれない。そして、極端な話をすれば幼稚園のうっすらと残っている記憶の中にあるキレイな先生かもしれない。


 そして、今回の数回目の恋は目の前にいる鴬さんだろう。


 とは言っても鴬さんは謎の多い女の子で普段から何を考えているかわからない。普段の授業中はぽけぽけ外を眺めていることもあればマジメに授業を受けていたりしている。


 今回のオリエンテーション合宿はこの班行動が多い。鴬さんのことを色々知るチャンスだ。頑張ろう。


「おーい、英断ー」


 同じ班の男子がボクを呼んだので向かうとチェックポイントに着いたようだった。


 ——ここ信貴山城は戦国時代に誰が治めていた?


 理科の先生がカンニングペーパーを見ながら問題を出した。理科の先生もボソッと『聞いたことないな』とつぶいていた。他の班員はわからないが、ボクは知っている戦国武将を考えた。豊臣秀吉、織田信勝、なんとか茂雄(シゲオ)の3人を頭に浮かべた。


「はい! 茂雄!」


 理科の先生はカンニングペーパーを見て違うと首を振った。鴬さんは『茂雄』と聞いてピクッと眉をあげていた。結局、回答は『諸説あるが松永(マツナガ) 久秀(ヒサヒデ)』だろうと理科の先生が教えてくれた。


 ……とは言っても次のチェックポイントついたら忘れるな。


 そして、次のチェックポイントに向かった。道なりに歩き着いた所には体育の新任の先生がいた。


 ——お前らの好きな筋肉は!!


 班員全員答えた。ボクは筋肉にはさほど興味がないので『上腕二頭筋』と回答しておいた。道中に筋肉トークして鴬さんは『男の大胸筋は最高』と熱く語っていた。


 帰ったら大胸筋鍛えよう。


 最後のチェックポイントには保健室の先生と炭酸ジュースと経口補水液とペットボトルに紙が貼られていた。鴬さんが紙をじっと見ていた。


「なにか書いてるの?」

「え、あ、なんでもない!!」


 鴬さんは視線をそらしていた。よく見れば英語で『alcohol』と書いていた。


「もしかして、普段飲んでる……?」

「はぁ? 飲んでないし」


 飲んでる飲んでない論争を繰り広げているうちに班員もどういう事か理解できず止まっていた。


 ——今、あなた達が飲むべき飲み物は?


 ボクが迷わず経口補水液に手を出そうとする前に別の班員が炭酸ジュースを手に取り飲んだ。そして班員の一言。


「炭酸は冷えてねぇとうまくねぇよ」


 このよくわからないチェックポイントはウォークラリーの最終班だった関係で小道具が残っていなくて先生のポケットマネーでこの3種類を購入して待っていた。


「もしかして、アルコールは……」



——えぇ、あなた達が寝た後に先生たちで飲む用の1本よ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る