一見すると「少子化対策として結婚を促す法律」という少し突飛な設定ですが、その内容が「名字によって外出できる
曜日を制限する」というところが面白かったです。
説明だけ聞けばかなり無茶苦茶な法律なのに、「観光地の混雑緩和」というもっともらしい理由が添えられていることで、妙に現実味があります。
そして、この作品で特に好きだったのが、結婚促進法そのものよりも、それによって二人の恋愛の意味まで変わってしまうところです。
普通なら、告白が成功した時点で幸せな恋愛が始まるはずなのに、
「結婚しなければ、一緒に自由に出かけることすらできない」
という社会になったことで、「付き合う」という段階そのものが成立しにくくなっている。
その結果、亜香里の最後の
「あなたは、私との結婚は考えてるのよね?」
という言葉がものすごく効いていました。
これが単純な結婚願望の強い女性の台詞ではなく、この社会では非常に合理的な確認になっているのが怖いです。
しかも彼女自身も法律に全面的に賛成しているわけではなく、「無理矢理な感じはする」と理解している。それでも制度の中で生きる以上、相手に結婚の覚悟を求めざるを得ない。
法律が人間を直接「結婚しろ」と命令するのではなく、日常生活を不便にすることで、自発的に結婚を選ばせようとしている構造がかなり嫌らしくて好きでした。
タイトルは『結婚促進法』ですが、読後に感じたのはむしろ、
「これは本当に“促進”なのか?」
という疑問です。
本人達が自由に決めたはずの恋愛や結婚に、国家の制度が少しずつ入り込んでくる。その不気味さを、長い説明ではなく男女二人の何気ない会話だけで見せているところが上手いと思います。
特に冒頭の甘い告白と、最後の「それだけの覚悟はあるかしら?」の落差が印象的でした。
恋愛ものとして始まり、気付けば社会風刺SFになっている。
短い作品ですが、「もし本当にこんな法律が出来たら?」と読み終わった後も考えてしまう、発想の面白い作品でした