このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(54文字)
泥棒だと思っていたものが泥棒ではない。その転換を、姿でも気配でもなく足音のリズムだけでやってしまうのが見事です。しかも幼い子が言葉にできなかった違和感を、大人になってから別の知識が拾い上げる。子供の頃の体感が証拠になる構図もいい。淡々とした語り口なのに、あの音だけがずっと耳に残る怪談でした。
幼い頃に何度も聞いた、誰かが階段を上り下りする「ギッ、ギシ……」という足音。その正体を怪談動画の何気ない解説から捉え直していく流れが巧みです。しかも最後に描かれるのは、現在の主人公自身が一歩ずつ階段を上る音。同じ足音が「過去に聞いた怪異」なのか「現在の自分の足音」なのか、その境界を明確に説明しないまま終わるため、読み終えた後に幼少期の場面まで戻って考えたくなる怪談です。