金銀財宝、名声、果ては命すらも含めて、
誰かに奪われ得る最も大切なものとは何でしょうか。
本作は、それが「存在の痕跡」、すなわち“記録”であると強く訴えかけてきます。
雨に流されれば足跡は消え去り、
私たちは時折、目覚めた寝床でふと考えます。
「本当に昨日、何があったのだろうか」と。
主人公を取り巻く世界は暴虐で、神経質で、どこまでも無機質です。
人間を数字で分類し、確たる事実さえも歪めて思考を惑わせます。
そんな世界の中で、物事を「上から」見通すことのできる主人公が、これからどう道を切り拓いていくのか。
独特のテイストと緊張感が漂う、秀逸なファンタジースリラーです。