面白かったのは、同型であることがただの設定で終わらず、関係の手段になっていくところです。アリスとベルは髪と学習内容以外ほとんど同じ女性型人造人間で、深宇宙探査のために送り出される。不調が起きれば背中を開け、過熱した部品を替え、規定どおり脚や眼を融通しあう。表面を撫でられるより、中を見られるときのほうが繋がりを感じる、という感覚がそのまま二人の距離になっていて、探索譚というより手入れの物語として読めました。
良かったのは、人形の恋を大げさに歌い上げない文体です。火星のつくりものの花火、返事のなくなる通信、スリープを挟んだ三百年が、手順の説明のような静けさで進みます。そのぶん、ベルが人格を維持できないと言いだし、動く部品を渡して眼だけ最後まで残してほしいと頼む場面が重い。到達したあと、ベルのものだった眼の焦点が宇宙の果てではなく窓に映るアリスの顔に結ぶところは、この作品でのいちばんきれいな着地だと思いました。