雨と紙とインクの匂いがする書庫都市レヴァン。そこで主人公のしおりが読むのは、死者が書き終えられなかった手紙や、渡せなかった返事です。
この作品で心に残るのは、言葉を選べなくなる人の気持ちです。感謝を書けば別れられなくなる。心配をかけたくなくて、苦しいと言えない。短い文章とその余白から、矛盾した思いが伝わってきます。自分にも、書いては消した返事があったことを思い出しました。
一方で、読むことには危険もある。青い封筒をめぐる謎が、静かな街に少しずつ不穏さを広げていきます。しおりとエルザの、少しおかしくて温かい掛け合いが、その緊張の中でほっとさせてくれました。
他人の言えなかった言葉を読む仕事が、やがてしおり自身の書きかけにもつながっていく。全五話を読み終えると、冒頭の手紙も違って見えてきます。送れなかった言葉の行方を、静かに見届けたくなる物語です。