最低な誕生日
10月になり秋が深まってきた
もうすぐ大珠の27歳になる日がやってくる
亜子は、久しぶりに自分の実家で誕生日パーティーをしようと両親と一緒に計画をたて始める
実家のメンバーだけでは少し心配
ということで恋人であるユキと友人として日依も誘うことにした
日依は快くすぐに引き受けたが、ユキは一瞬身を後ろに引いた
「えー、でも俺が行ったら邪魔にならないかな・・・」
「多分大丈夫です。特にうちの父は、ユキさんのこと親戚同然に思ってると思いますし」
「ならいんだけど・・・んー」
「いいじゃん!おにぃ!お仕事以外の誕生日パーティー参加、久しぶりなんだしさ!」
ユキは二人が言うなら、と躊躇しつつも引き受けた
三人は当日までにそれぞれ準備をする
亜子は、大珠への特別なプレゼントを用意していた
☆ ★ ☆
誕生日パーティー当日
本宮家の三人と隼田兄妹がクラッカーを鳴らし、パーティーがスタートする
6人でケーキを囲み、裕と亜子、ユキと日依がそれぞれおうちカラオケで熱唱し、パーティーは最高潮に盛り上がった
プレゼントを渡すタイミングになり裕と文江、日依、そして亜子からそれぞれ大珠プレゼントが渡される
亜子が渡したのは、オレンジの小さなケースだった
大珠がそっとケースを開けると小さな指輪が入っていた
指輪の中心には大珠の誕生石である緑色のトルマリンが輝いていた
「すげぇ、亜子ねぇ!結構高かった
だろ?」
「うん。でもギリギリ買えるくらい
だったから」
「ありがとな。いい時につけるわ」
指輪をはめて嬉しそうに喜ぶ大珠
亜子もほっと一安心するのだった
パーティーは夜更けまで続いた
その内に裕とユキはリビングで眠ってしまった
大珠と亜子は、リビングの二人を背にベランダで話していた
大珠は亜子に改めて指輪の礼を言った
「ありがとな。プレゼント」
「いいえ。サイズもぴったりで本当に良かった」
亜子は意を決して大珠にユキと恋人になったことを打ち明けようとした
しかしその言葉は、大珠に奇しくも遮られてしまった
「大珠あのね、私・・・」
「亜子ねぇ、おめでとう」
大珠は全てをわかっているかのような言葉を贈った
そしてさらに自分が今まで思っていたことを亜子に話した
「亜子ねぇさ、学生の時自分のこと
モテないと思ってたでしょ?」
「え・・・。そうだけど」
「俺、ずっと見てたから知ってたよ。亜子ねぇが好きだったから」
大珠のその言葉を聞いた瞬間、亜子の目から涙が溢れだした
大珠に何か言わなければと思うが、
亜子の涙は次々に出てきて止まらない
その時は、ただ静かにしゃっくりを
上げるしかなかった
そんな亜子を見て大珠は困り笑いを
していた
「なんで亜子ねぇが泣くんだよ」
「だって、だって・・・。もっと早く私が大珠の気持ちに気づいてたらと思うと申し訳なくて・・・ごめんね
大珠、久しぶりに家でお祝いしようと思ったのに・・・最低な誕生日に
なっちゃった・・・」
亜子の涙はさらに溢れだし、とうとう亜子は両目を手で覆うことしかできなくなった
大珠も瞳に光るものを抑えつつ亜子を慰める
「大丈夫だよ、亜子ねぇ。
俺は亜子ねぇが人を好きな気持ちが、やっと出てきてくれたことが嬉しいんだ」
大珠のこの言葉を受けても亜子の涙は止まらず、亜子はずっとごめんねと
大珠に謝罪しつづけた
その時の大珠にできたのは、ただただ彼女をハグして大丈夫と言い続けて、背中をさすり慰めることだった
「俺も二人を応援するからさ」
亜子の耳にそんな言葉が届いてか否か、大珠は亜子の背中をポンポン叩きながらそんな言葉をかけ続けた
ーーー
翌朝、ユキが目覚めると隣に亜子の
寝顔があった。亜子の瞼の下には
くっきりと昨夜の涙の跡が残っていた
先に起きていた大珠が、ユキに元気に挨拶をした
大珠は昨夜パーティーで飲んだ
ジュースの残りをユキと飲みながら、亜子に自分の気持ちを話したことを伝えた
「そっか、だから亜子ちゃん泣いてたんだね」
「寝落ちるまで泣かせちゃいました
結局」
大珠は、ははっと笑って一息ため息をつく
そしてもう一度ユキのほうを見て
言った
「ユキさん俺も二人のこと全力で応援したいんで、ユキさんのこと兄貴と
思うことにしました」
「えっ!」
突然の大珠の言葉にユキは身が仰け反るほど驚いた
そして、少し照れながらも大珠に確認する
「でも・・・いいの?大珠くんは
嫌じゃない?」
「はい!大丈夫です!だから!」
大珠は返事をすると勢いよくユキの前に手を差し出した
ユキは少し躊躇したが、大珠は気に
せず頷いた
ユキは笑って大珠の手を握った
「改めてよろしく!大珠くん」
「よろしくお願いします、兄貴!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます