ケーススタディへの応援コメント
加賀倉様、拝読いたしました!
聞きたくない声が聞こえてしまう「地獄耳」の怪異譚かと思えば、物語が進むほど、本当の地獄は男の耳ではなく、その内側にあるのではないかと思わされました。
特に恐ろしかったのは、男が自ら人を殺す勇気を持たないことです。
他者の家族を拘束し、その命を盾にして殺人を強要する。しかも、秘書へ渡した拳銃には、初めから一発も入っていなかった。
自分では引き金を引けない「腰抜け」でありながら、他者の恐怖や愛情を利用して、その手を殺人者の手へ変えてしまう。直接手を下さないことが男の弱さではなく、むしろ卑劣さを際立たせている構成に、ぞっとしました。
そして、精神科医と刑事の会話によって、それまで読者が前提としていた「声」の存在そのものが揺らぎ始める。
声の主が死んだから聞こえなくなったのか。
それとも男は、初めから聞こえていない声をつくり上げ、自らの殺意に理由を与えていただけなのか。
どちらとも断定しきれないところが、実に不気味です。
さらに、男の家族が科学者、女優、医者、政治家、一流企業勤めだったと明かされた瞬間、それまで声の主として選ばれてきた人々の「肩書」が、まったく別の意味を帯びるのも見事でした。
成功した家族への妬みだったと単純に結論づけず、「レッテルで擬似的に殺すような遊び」という可能性にとどめている。だからこそ、男の中に何が潜んでいるのか、読者は読み終えたあとも考え続けてしまいます。
遠くの声を拾う耳が地獄なのか。
聞こえたことにして他者を裁く心が地獄なのか。
それとも、自分の手を汚さず人を死へ追いやれる、この男自身が地獄なのか。
題名の『地獄耳』が、読後には幾重もの意味をもって響きました。
恐ろしく、それでいて構造を何度も振り返りたくなる一作でした!
ケーススタディへの応援コメント
楽しく読ませていただきました。
精神病患者かと思ったところで尤もらしい動機が開示されて、これまでの話がカチッと腑に落ちるような不思議な心地でした。
良質な作品をありがとうございました!