その人は、月の始めにいつも、薔薇を買いにくる。言葉を交わせば、彼は語る。死んだ妻が好きだった花なのだと。そんな愛の形もある――と思うかも知れない。けれどご用心。“愛の形”は、予想を超えた姿を潜めているのかも知れないのだから――。
穏やかに進んでいく物語の中に、少しずつ感じる違和感。そして、読み終えたあとに改めてタイトルを見返したくなるような作品でした。「愛の形」は人それぞれ。 でも、その愛が、本作では怖い余韻を残します。短いお話ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
「愛の形」という言葉を、これほど静かに怖い方向へひっくり返す作品も珍しいです。前半は、亡き妻を二年間想い続ける男性と、そんな一途な愛に惹かれていく花屋の女性の恋愛譚。だからこそ、最後の「妻の隣に供える場所を作ったんですよ……」が効きます。薔薇とカスミソウという小さなモチーフが、読後にはまったく違って見えてくる構成も巧み。優しい恋物語を読んでいるつもりでいたところへ、最後に静かな狂気を差し込まれる一編です。
月初めの花屋さんに、毎月かかさず一輪の薔薇を買い求めに来る男性。その花には、かけがえのない愛の物語が隠されていました――。これは、花屋で働く“私”が出会った、珠玉のラブストーリーです。ごめんなさい。本作はホラー短編でした。ぜひお読みください。